心臓弁膜症の外科的治療
大動脈弁狭窄症の主な症状
息切れ
胸の痛み
疲れやすさ
失神
狭心症、失神、心不全などの症状発現後の2年生存率は50%
従来の人工弁
大動脈弁狭窄症は、重症になると突然死などのリスクが高い病気です。そのため、硬くなった弁を人工弁に取り替える必要があります。これまでは開胸(胸を大きく切る)して、人工心肺で一時的に心臓を止めておこなう大動脈弁置換術が主体でした。この手術自体はすでに方法が確立し、人工弁の改良も進み、安全で確実性の高い手術です。しかし、開胸して人工心肺を使うので、体への負担は大きい手術になります。高齢で体力の低下した方や、がんのある方、過去に開胸手術したことのある方、あるいは様々な理由で通常の人工弁置換手術に耐えられない患者さまは、これまでは手術することができませんでした。
そのような患者さまを対象にした、新しい治療法として開発されたのが、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)です。
そのような患者さまを対象にした、新しい治療法として開発されたのが、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)です。
通常の人工弁置換か、TAVIか
TAVIについて
TAVIとは、経カテーテル大動脈弁留置(Transcatheter Aortic Valve Implantation)のことです。
小さい傷で
体への負担が少ない
体への負担が少ない
通常法が
困難な方対象
困難な方対象
年齢制限なし
100歳でも可
100歳でも可
新しい治療
(2013年〜)
(2013年〜)
- 人工心肺を使わず、小さな傷でおこなうので体への負担は少ないです。
- 重度の大動脈弁狭窄症で、通常の人工心肺を用いた手術が困難な方(高齢者、過去に心臓の手術を受けた方、様々な原因で体力が低下している方)が対象となります。
- 年齢制限はありません。90歳でも100歳でも可能です。
- 日本では2013年10月から始まった、新しい治療です。
TAVIで使用する人工弁
●SAPIEN3 (Edwards Lifesciences®)
SAPIEN3 (Edwards Lifesciences®)
留置後のイメージ
大腿動脈からのTAVI
心尖部からのTAVI
●CoreValve (Medtronic®)
CoreValve (Medtronic®)
留置後のイメージ
多くの方が
足の付け根から可能
足の付け根から可能
人工心肺不使用
手術時間は
1時間ほど
1時間ほど
傷は5cmほど
- ほとんどの方(約95%以上)は、足の付け根の動脈から小指の太さくらいのカテーテル(細い管のこと)を挿入して、心臓まで人工弁を持っていきます。残りの約5%の方(足の血管からカテーテルが入れられない方)は、別の場所(心尖部、上行大動脈、鎖骨下動脈など)からおこないます。
- 人工心肺を使わず、大動脈弁を新しい弁に置き換えます。
- 手術時間は1時間ほどです。
- どの場合も5cmほどの小さな傷で可能です。
TAVIの利点と欠点
利点
- 体の負担が少ない
手術時間は1時間、人工心肺は使いません。小さな傷でできます。 - 高齢者でも可能
- 1週間ほどで退院可能
欠点
- 人工弁の耐久性が不明ですので、あまり若い方には適応されない。
- 通常の手術より、手術後にペースメーカーを挿入しなければいけない場合がやや多い。
現時点でTAVIが適応にならない患者さま
人工透析中の方
自身の病気について
理解困難な方
理解困難な方
先天的弁異常の方
大動脈弁逆流が主体の方
大動脈弁逆流が主体の方
- 慢性腎不全で人工透析をしている方
- ご自身の病気について、理解することが難しい方
- 先天的な弁の異常や大動脈弁逆流が主体の方
[ 豊富な知識と経験のあるハートチームが治療にあたります ]
- 2019年秋からTAVIを開始
- TAVIの豊富な経験を持つ、TAVIの指導医が2名在籍
- 劣化した古い人工弁の中に、カテーテルで人工弁を挿入する“Valve-in-Valve”という治療も当院では可能
Valve-in-Valve