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脳卒中・脳血管障害について


脳卒中は24時間365日の体制で対応

脳卒中とは、脳血管の異常により生じる病気の総称で、脳梗塞一過性脳虚血発作脳出血くも膜下出血、脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻、もやもや病などがあります。脳卒中は早期の治療開始が重要であり、24時間365日の体制で対応しております

当院では、脳神経内科脳神経外科で構成される“脳卒中センター”で、脳卒中の治療にあたります。適応があれば積極的に経静脈的血栓溶解療法(t-PA静注療法)や、カテーテルを用いた経動脈的血栓溶解療法もおこなっております。また急性期からのリハビリテーションが重要であり、早ければ入院翌日よりリハビリを開始しております。休日もリハビリができる体制が整っています。


脳梗塞

脳血管の狭窄または閉塞により、脳組織への血流が低下し、神経細胞が死んだ状態をいいます。脳CTと脳MRIにて診断します。喫煙、高血圧、糖尿病、脂質異常症などが危険因子とされています。以下の3つのタイプに分かれます。

ラクナ梗塞

穿通枝と呼ばれる、直径1mmに満たない血管の閉塞による脳梗塞です。小さな範囲の梗塞で生命にかかわることはありませんが、錘体路とよばれる運動神経の通り道に発症することが多く、麻痺の程度が重くなることも多いです。内服と点滴による治療が中心となります。

アテローム血栓症

主幹動脈や皮質枝(穿通枝以外)の脳内の血管が狭窄または閉塞することで生じる脳梗塞です。比較的広範囲に脳梗塞が生じることもあります。また、発症後数日間は症状が不安定になることがあります。内服と点滴での治療となります。狭窄や閉塞している血管によっては、慢性期にバイパス手術やカテーテルによる血管形成術をおこなうこともあります。

塞栓症

心房細動といわれる不整脈により心臓の中に血栓ができ、これが脳に飛んで脳の血管を閉塞することで発症します。広範囲の脳梗塞となることが多いのが特徴です。やはり、内服と点滴での治療となります。

脳梗塞の特殊な治療方法

脳梗塞に対する経静脈的血栓溶解療法(t-PA療法) 】
t-PAは、点滴から投与し、血栓を溶かし、閉塞した血管を再開通させる薬です。2005年10月に日本で認可されました。この薬剤はその作用が強い分、有害事象にも十分な注意が必要となります。使用できるのは発症から超早期(これまでは発症から3時間以内との決まりでしたが、2012年9月より、4.5時間以内に変更となりました)で、多数の条件を満たしたときのみ使用が可能となります。

【 カテーテルを用いた経動脈的血栓溶解術 】
t-PAが使用できなかったり無効の場合、カテーテルを用いて物理的に血栓を溶解する方法もあります。当院では、ウロキナーゼを用いた血栓溶解療法やバルーンによる経皮的動脈形成術(PTA)だけではなく、Merciリトライバーを用いた血栓除去術もおこなっております。

【 バイパス手術 】
頭蓋内の主な血管が閉塞し、その灌流領域の血流が低下している場合、バイパス術をおこなうことがあります。浅側頭動脈―中大脳動脈吻合術が代表的な術式になります。これは、頭皮を栄養している血管(直径3mm程度)を脳の血管(直径1~2mm程度)に、顕微鏡下で吻合する手術です。

頸動脈ステント留置術(CAS; Carotid Artery Stenting)、内頚動脈内膜剥離術(CEA; Carotid Endoarterectomy) 】
脳に入る手前の頸部で血管が狭窄(内頚動脈狭窄といいます)することでも脳梗塞は発症します。50%以上の狭窄でそれが原因で症状がある場合、または70%以上の狭窄で無症状の場合、手術の対象になります。それ以外の場合は、内服治療となります。しかし、この基準はあくまでも目安であり、どの治療がご本人にとっての最良の方法を考えて治療をおこなっています。
手術は、内頸動脈内膜剥離術(CEA)、頸動脈ステント留置術(CAS)の二通りがあります。2008年4月より脳血管内治療専門医によるステント留置術が保険適応になりました。 当院ではどちらの治療も可能です。最近ではカテーテルでおこなう頸動脈ステント留置術の割合が多くなっています。

一過性脳虚血発作

脳血流が一時的に低下し虚血状態に陥ったものの、短時間で血流が回復したため神経細胞が死に至らずに症状が回復する病態です。脳梗塞の黄信号でもあり、場合によっては入院のうえ脳梗塞に準じた加療が必要となります。また頭蓋内血管や頸部の血管に狭窄があったり、不整脈が潜在している可能性が高く、精査が必要となります。

脳出血

脳内の血管が断裂し、脳実質内に出血が生じます。この際に、脳実質を損傷し神経症状を呈する疾患です。出血の部位や大きさにより症状は異なります。高血圧が原因となることが多く、一部に加齢によるアミロイドアンギオパティーや脳動静脈奇形、もやもや病などの疾患が原因となることもあります。原則的には保存的治療(点滴、内服など)となりますが、血腫が大きく意識障害が進行する場合は、救命を目的に手術をおこなうことがあります。また生命にはかかわらないものの、比較的血腫が大きい場合は、早期の離床を目的に、発症から数日後に定位血腫吸引術をおこなうことがあります(脳動静脈奇形、もやもや病の治療方法は改めて記載します)。一度発症すると、出血により損傷した脳は回復しませんので、予防(日常の血圧管理)が重要な疾患の一つになります。

脳出血の治療方法

【 開頭血腫除去術 】
出血が大きく生命にかかわる場合は、救命を目的に手術が必要となることがあります。頭蓋骨をあけ、顕微鏡下に血腫を除去します。

【 内視鏡による血腫除去術 】
頭蓋骨に約2cmの穿頭を行い、内視鏡下で血腫を吸引除去する方法です。開頭血腫除去術に比べ切開範囲は小さく、体力的な負担が小さくなるのが利点です。その反面、術中の止血が開頭術に比べて難しくなる傾向があります。現時点では、当院では安全性を重視して開頭による血腫除去術を第一選択としておりますが、患者様の全身状態に応じては内視鏡による血腫除去術を選択しております。

【 定位血腫除去術 】
この手術は、生命にはかかわらないものの、血腫が大きいため意識障害が強い症例におこなわれることがあります。特殊な金属製のフレームを装着し頭蓋骨に約1.5cmの穴をあけ、そこから血腫腔まで針をすすめて血腫を吸引します。通常、発症より2~5日目におこなうことが多いです。


くも膜下出血

脳動脈瘤の破裂が最も多い原因です。再破裂した場合は致命的となる可能性が高く、発症より72時間以内の手術が必要です。手術は開頭によるクリッピング術と、カテーテルによるコイル塞栓術の2通りがあります。どちらの方法がよいかは、動脈瘤の部位や形態、患者さまの年齢、全身状態など総合的に検討し、治療方針を決めております。現在のところ約7割の症例がクリッピング術、約3割がコイル塞栓術をおこなっております。またくも膜下出血は手術のみで完治する病気ではありません。全身管理や、術後4-14日目にピークがくる脳血管攣縮に対しての集学的な治療が必要となります。

クリッピング術

クリッピング後は○印で囲んだ部分の動脈瘤が消失しています。また使用するクリップはチタン製で、MRIに対応しています。

コイル塞栓術

動脈瘤(○印)は消失し、分枝血管(矢印)は温存されています。

未破裂脳動脈瘤

MRIの普及で発見されることが多くなっています。未破裂脳動脈瘤の保有率は2-3%とされております。未破裂脳動脈瘤が見つかった場合、破裂予防として手術をおこなうか経過観察とするかの目安は、脳卒中のガイドライン2009に呈示されております。当院でも原則として、最大経5mm以上かつ70才未満を治療適応と考えております。ただし、動脈瘤の形態や部位、家族歴の有無、複数個の動脈瘤などの因子も重要です。治療適応は一律ではなく、個々の症例に応じて方針を検討しております。治療方法は、開頭によるクリッピング術とカテーテルによるコイル塞栓術の2通りがあります。動脈瘤の形態、部位、患者さまの年齢、全身状態に応じてどちらを選択するか決めております。

もやもや病

もやもや病は難病指定されており、原因不明で日本人に多いとされています。脳梗塞で発症することも、脳出血で発症することもあります。脳血行再建術が適応となることがあります。当科ではもやもや病に対して、SPECTによる血流評価、血管撮影の所見、年齢や発症された症状に応じて手術療法を含めて対応させていただきます。

脳動静脈奇形

脳動脈瘤の約1/6の有病率とされております。治療方法は、手術、放射線治療、血管内治療の3通りがあります。多くの場合、複数の治療方法を組み合わせて治療をおこないます。決まった治療方法はなく、一例ごとに病態を詳細に評価したうえで、治療方針を決定します。

硬膜動静脈瘻に対する治療

脳出血の原因として、硬膜の血管に異常がある場合があります。 その場合、血管内治療で塞栓物質(コイル・液体塞栓物質など)を異常血管に詰めて治療する場合があります。

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