早期発見のために知っておきたい! 大腸がんの5つのポイント
東 玲治(ひがし れいじ)
消化器内科部長 兼 消化器内視鏡センター長
- 主な資格|日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医、日本消化器病学会 専門医・指導医、日本がん治療認定医、 H.pylori(ピロリ菌)感染症認定医
- 得意分野|消化器内視鏡、消化器病
1.大腸がんとは
大腸がんとは大腸にできるがんのことで、大きく結腸がんと直腸がんに分けられます。日本人ではS状結腸と直腸にがんができやすいといわれており、S状結腸と直腸を合わせると全体の半数以上を占めています。大腸がんは高齢化と食の欧米化により日本では増加の一途をたどっています。悪性新生物による死亡原因では、大腸がんは男性で3位、女性では1位となっています(2019年)。大腸がんの発生パターンは、腺腫(良性のポリープ)ががん化する場合、粘膜上に直接がんが生じる場合、慢性的な炎症からがんが発生する場合などがあります。他のがんと同様に、原因は食事や運動などの生活習慣だと考えられています。中でも過度な飲酒、肥満、喫煙はリスクを上げる大きな要因です。さらに、遺伝との関連性も指摘されており、家族に大腸がんもしくは、胃がん、子宮体がん、卵巣がんなどを患った方がいる場合には、がんになりやすい体質の可能性があり注意が必要です。罹患リスクは40歳頃から徐々に上昇し50歳頃からさらに上昇に転じるため、40歳から大腸がん検診がはじまります。肝臓や肺などに転移した状態で発見されると根治は難しくなりますが、早期発見・早期治療できれば治る病気ですので、積極的に検診を受けるようにしてください。
2.大腸がんの症状
根治できるような初期の大腸がんは症状がほとんどありません。進行してくると、腸の内腔が狭くなり便秘や下痢が出現します。また、便に血液が混じる(血便)、急に便が細くなる、体重が減る、立ち眩みなどの症状が出現してくるようであれば要注意です。繰り返しになりますが、早期発見がとても大切なので、このような症状があればできるだけ早く医療機関を受診してください。さらに進行すると、腸閉塞や腸に穴が開く消化管穿孔を引き起こし、緊急手術となることもあります。
3.早期発見のために
便潜血検査
まず、健康診断や人間ドックで便潜血検査を受けてください。大腸がんの表面はもろく出血しやすいという性質があるため、便に血が混じっていないかを調べます。大腸がんのスクリーニングを目的に行われる、安全、簡単、安価な検査です。便潜血検査では、目に見えない微量な血液の混入も確認できます。しかし、大腸がんを患っていても必ず陽性となるわけではなく、一方で、痔核などの大腸がん以外での出血でも陽性となってしまうこともあります。あくまで大腸がんの可能性がある人を見つけるための検査なので、便潜血検査が一度でも陽性となれば大腸内視鏡検査等の精密検査を受けることをおすすめします。
便潜血陽性者の精密検査受診率は70%程度とまだまだ低いです。多くの大腸がんは何年もかけて大腸ポリープ(腺腫)からゆっくりと発育増大し進行したがんとなります。そのため毎年便潜血検査を受けていただければ大腸がんを早期に発見できる確率が高まりますし、文献的にも毎年便潜血検査を施行することで、約60%の死亡率低下効果があると報告されています。
便潜血陽性者の精密検査受診率は70%程度とまだまだ低いです。多くの大腸がんは何年もかけて大腸ポリープ(腺腫)からゆっくりと発育増大し進行したがんとなります。そのため毎年便潜血検査を受けていただければ大腸がんを早期に発見できる確率が高まりますし、文献的にも毎年便潜血検査を施行することで、約60%の死亡率低下効果があると報告されています。
大腸がんの2次検査
便潜血検査で陽性となった場合、大腸がんや大腸ポリープを発見・治療するために2次検査を行うこととなります。その検査は主に「大腸内視鏡検査」、「CTコロノグラフィー」、「大腸カプセル内視鏡検査」がありますが、私はなにより大腸内視鏡検査を推奨しています。
大腸内視鏡検査の様子
大腸内視鏡検査とは
先端に小型カメラがついた内視鏡(直径12mmほど)を肛門から挿入し、大腸の内部を調べる検査です。大腸の内部を映し出すモニター画面を見て、医師がリアルタイムで観察することができます。事前に下剤を飲んで大腸をきれいにしてから検査を行います。 カメラで直接内部を観察できるので、5mm以下の小さな病変も見つけやすいのが特長です。また、病変部位が見つかった場合、ズームアップして表面の模様を観察し、より詳細な診断を行ったり、その場で内視鏡を使って組織採取や病変の切除を行うこともできます。大腸がんの発見が早期であるほど内視鏡での切除が簡易になりますし、予後も安定します。検査中の痛みは個人差が大きいですが、苦痛が強い場合には鎮痛剤や鎮静剤を使用することもあります。
先端に小型カメラがついた内視鏡(直径12mmほど)を肛門から挿入し、大腸の内部を調べる検査です。大腸の内部を映し出すモニター画面を見て、医師がリアルタイムで観察することができます。事前に下剤を飲んで大腸をきれいにしてから検査を行います。 カメラで直接内部を観察できるので、5mm以下の小さな病変も見つけやすいのが特長です。また、病変部位が見つかった場合、ズームアップして表面の模様を観察し、より詳細な診断を行ったり、その場で内視鏡を使って組織採取や病変の切除を行うこともできます。大腸がんの発見が早期であるほど内視鏡での切除が簡易になりますし、予後も安定します。検査中の痛みは個人差が大きいですが、苦痛が強い場合には鎮痛剤や鎮静剤を使用することもあります。
CTコロノグラフィーは、大腸に炭酸ガスを注入し十分に拡張させた状態でCT撮影を行う検査です。割と精度が高く、ある程度の大きさのがんやポリープは見つけることができます。大腸カプセル内視鏡検査は、超小型カメラを内蔵した約30mmのカプセル型の内視鏡を飲みこみ、カプセルが自動で撮影した写真を確認し診断を行います。どちらも画像診断なので、がんやポリープが見つかった場合は、後日、大腸内視鏡検査での切除が必要になります。また大腸カプセル内視鏡は、大腸内視鏡検査で挿入困難な方や大腸内視鏡検査のリスクが非常に高い方に限って、保険適応されております。
内視鏡での治療後の生活
大腸内視鏡で病変を切除した場合、患者さんの負担は本当に少ないので、一週間程度で治療前と同じような日常生活をおくることができるようになります。外科手術の場合は術後のリハビリなどを含めると1~2ヶ月かかることが多いです。ただし内視鏡による治療後は、数日から1週間程度は消化の良い食事をとり、お酒も控えてもらいます。また、腹圧がかかるような行為や運動も控えてください。
また、内視鏡で『がんがしっかり取りきれた』という方は、特に通院の必要もなく、一年後に大腸内視鏡検査を受けていただければ大丈夫です。その際にがんやポリープなどが無いようでしたら、それからは3年に1度くらいの間隔で大腸内視鏡検査を受けていただくのがよろしいかと思います。
また、内視鏡で『がんがしっかり取りきれた』という方は、特に通院の必要もなく、一年後に大腸内視鏡検査を受けていただければ大丈夫です。その際にがんやポリープなどが無いようでしたら、それからは3年に1度くらいの間隔で大腸内視鏡検査を受けていただくのがよろしいかと思います。
最後にメッセージ
大腸内視鏡のメリットはやはり精度が高く、検査からそのまま診断・治療を行える点です。カメラを挿入すると聞くと怖い印象をもたれる方も多いと思いますが、そこまで負担の大きい検査ではありません。大腸がんの早期発見のためにも、40歳以上の方は1年に一度は検診などで便潜血検査をして、陽性になった場合には大腸内視鏡検査を受けていただきたいです。