医師『糖尿病と感染症の関係』
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医師『糖尿病と感染症の関係』
感染確率と死因割合の比較
糖尿病患者とそうでない方を比べると、感染症にかかる率は約1.5倍、感染症で入院する率は1.9倍に上昇すると言われています。糖尿病患者の死因で感染症は第2位(17.0%)となっており、一般日本人の死因での4位(9.9%)と比べ高くなっています。
血糖値が200mg/dlを超えた状態が続くと免疫の働きが低下し、感染しやすくなります。
糖尿病の合併症により血流が悪くなると、組織への血のめぐりが悪くなり(虚血)感染しやすくなったり、治療薬である抗菌薬の移行が悪くなったりします。
血糖値が200mg/dlを超えた状態が続くと免疫の働きが低下し、感染しやすくなります。
糖尿病の合併症により血流が悪くなると、組織への血のめぐりが悪くなり(虚血)感染しやすくなったり、治療薬である抗菌薬の移行が悪くなったりします。
糖尿病と新型コロナウイルス感染症の関係
新型コロナウイルスによる全世界の感染者数は2億3400万人を超えており(2021.10.5 WHO)、新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)と糖尿病の関係についても徐々に明らかとなってきました。(日本糖尿病協会HPより抜粋)
中国のコロナ患者7,337人における死亡率(日本糖尿病協会ホームページより抜粋)
糖尿病協会「今、糖尿病とともに生きる人へ」
糖尿病患者においても一般集団と同様年齢が高齢になるほどリスクが上昇します。50歳未満の死亡はわずかです。
メトホルミンの治療を受けている2型糖尿病患者はそうでない患者に比べ死亡リスクが低いとの報告があります。
メトホルミンの治療を受けている2型糖尿病患者はそうでない患者に比べ死亡リスクが低いとの報告があります。
リスク因子
北里大学より、米国でコロナ感染した患者28,095人を解析したところ以下の要因が報告され、要因が重複するほど危険性が高まると報告されています。
新型コロナウイルス感染時では、リスク因子の数が多くなるほど、入院や重症となる危険が高くなります。
<入院治療>
リスク因子の該当数が1つの場合、入院治療の危険性は約3倍。リスク因子が2つの場合は約6.5倍。リスク因子が3つの場合は約16倍。リスク因子が4つの場合は約19倍にもなります。
<クリティカルケア>
リスク因子の該当数が1つの場合、重症治療の危険性は約3倍。リスク因子が2つの場合は約15倍。リスク因子が3つの場合は約38倍。リスク因子が4つの場合は約56倍にもなります。
<入院治療>
リスク因子の該当数が1つの場合、入院治療の危険性は約3倍。リスク因子が2つの場合は約6.5倍。リスク因子が3つの場合は約16倍。リスク因子が4つの場合は約19倍にもなります。
<クリティカルケア>
リスク因子の該当数が1つの場合、重症治療の危険性は約3倍。リスク因子が2つの場合は約15倍。リスク因子が3つの場合は約38倍。リスク因子が4つの場合は約56倍にもなります。
判明した4つのリスク因子
・65歳以上
・男性
・2型糖尿病
・肥満(BMI 30kg/㎡以上)
・65歳以上
・男性
・2型糖尿病
・肥満(BMI 30kg/㎡以上)
対策と注意点
『対策や注意点はどうしたらよいでしょうか?』
①感染対策の基本の徹底
まずは感染対策を徹底することです。特別なことは必要ありません。一般の方と同様、「マスク着用」「三密を避ける」「手洗い・うがい」です。
②ワクチン接種
ワクチン接種は新型コロナの発症、重症化、感染を予防する効果が得られるとされています。特に重症化と死亡を予防するのに非常に効果があるため、ぜひ接種を受けることをお勧めします。
①感染対策の基本の徹底
まずは感染対策を徹底することです。特別なことは必要ありません。一般の方と同様、「マスク着用」「三密を避ける」「手洗い・うがい」です。
②ワクチン接種
ワクチン接種は新型コロナの発症、重症化、感染を予防する効果が得られるとされています。特に重症化と死亡を予防するのに非常に効果があるため、ぜひ接種を受けることをお勧めします。
(記事より作図)
国立国際医療センターの大規模調査からは2021年7月1日~9月22日までにコロナ感染で入院となった3417人の調査では、9割はワクチン接種がゼロか1回でした。十分なワクチン効果が得られるとされる2回目のワクチン摂取から、2週間以上経過した後の発症者は1.6%だけでした。65歳以上の高齢者では、集中治療室(ICU)に入る割合が非接種者の約7分の1に減少し、死亡する割合は約3分の1にそれぞれ低下しました。
(2021.9.29NHKニュース記事より)
(2021.9.29NHKニュース記事より)
③日頃の血糖管理を良好にする
良好な免疫機能を保つには、HbA1c<7.0%が目安となります。(高齢者の方は個別にHbA1c値の目標設定がありますので、主治医に確認してください。)
良好な免疫機能を保つには、HbA1c<7.0%が目安となります。(高齢者の方は個別にHbA1c値の目標設定がありますので、主治医に確認してください。)
④感染したかもしれないときのルールを決めておく
感染したかもしれないときのルール(シックデイルール)について主治医と決めておきましょう。十分に食事がとれないときの糖尿病治療薬の服用方法やインスリン注射の量について確認が必要です。
※ シックデイルールについては薬剤科のコラムでも掲載しています。ご興味のある方はあわせてお読みください。
『シックデイとは?』
発熱、嘔吐、下痢、食欲不振になり、血糖値が乱れやすくなった状態を「シックデイ」と呼びます。
シックデイでは、病気のストレスでインスリンの効きが悪くなって高血糖となったり、その反対に食事ができず、食べる量が少ないにも関わらず、いつも通り薬を飲んだり、注射することで低血糖がおきることがあります。
感染したかもしれないときのルール(シックデイルール)について主治医と決めておきましょう。十分に食事がとれないときの糖尿病治療薬の服用方法やインスリン注射の量について確認が必要です。
※ シックデイルールについては薬剤科のコラムでも掲載しています。ご興味のある方はあわせてお読みください。
『シックデイとは?』
発熱、嘔吐、下痢、食欲不振になり、血糖値が乱れやすくなった状態を「シックデイ」と呼びます。
シックデイでは、病気のストレスでインスリンの効きが悪くなって高血糖となったり、その反対に食事ができず、食べる量が少ないにも関わらず、いつも通り薬を飲んだり、注射することで低血糖がおきることがあります。
■2型糖尿病
一般的には、シックデイで食事量が半分以下であれば投薬を減量し、なかでも発熱・下痢などの脱水の恐れのある場合はメトホルミンやSGLT2阻害薬は休薬します。
■1型糖尿病
食事が取れなくてもインスリン注射を完全に中断してはいけません。
シックデイでは個別の対応が必要ですので、まずかかりつけの先生に、シックデイにはどのように対応すべきかの指示を受けてください。(日本糖尿病協会HPより)
一般的には、シックデイで食事量が半分以下であれば投薬を減量し、なかでも発熱・下痢などの脱水の恐れのある場合はメトホルミンやSGLT2阻害薬は休薬します。
■1型糖尿病
食事が取れなくてもインスリン注射を完全に中断してはいけません。
シックデイでは個別の対応が必要ですので、まずかかりつけの先生に、シックデイにはどのように対応すべきかの指示を受けてください。(日本糖尿病協会HPより)
ひきこもりはむしろ危険!
ひきこもりはむしろ危険!!!
<コロナでひきこもると却って入院・死亡リスク上昇>
運動不足群は活動群に比べ、コロナによる入院率は2倍以上に、ICU収容率は1.73倍に、死亡率は2.49倍にそれぞれ上昇しました。運動不足群は、基礎疾患(がん、糖尿病、循環器疾患、腎臓病、高血圧など)のある人よりも、死亡リスクがさらに高かった。
(2021イギリスの医学雑誌BMJより)
<コロナでひきこもると却って入院・死亡リスク上昇>
運動不足群は活動群に比べ、コロナによる入院率は2倍以上に、ICU収容率は1.73倍に、死亡率は2.49倍にそれぞれ上昇しました。運動不足群は、基礎疾患(がん、糖尿病、循環器疾患、腎臓病、高血圧など)のある人よりも、死亡リスクがさらに高かった。
(2021イギリスの医学雑誌BMJより)
身体活動量による影響
当院でも外来通院中の糖尿病患者さん100人に、コロナ感染蔓延前と蔓延後で運動に関するアンケート調査を行っております。
(2020 糖尿病学会九州地方会 森川ら)
(2020 糖尿病学会九州地方会 森川ら)
Exercise is medicine. (運動は治療そのものである)とも言われ、運動療法は糖尿病治療の根幹の一つです。特に寝てばかりや座りっぱなしはNGです。感染対策を取った上で、運動を取り入れましょう!
メッセージ
糖尿病患者さんはコロナにかかりやすいとは言えませんが、重症化予防のためにワクチン接種が望まれます。
万が一コロナ感染した時(シックデイ時)の血糖管理方法について主治医に確認しておきましょう。
コロナ対策での引きこもりは運動不足を招き、却って予後を悪くする可能性があります。
外出が不安な方は在宅での運動も有用です。当院ホームページ上にも運動動画をアップしていますので是非ご利用ください。
万が一コロナ感染した時(シックデイ時)の血糖管理方法について主治医に確認しておきましょう。
コロナ対策での引きこもりは運動不足を招き、却って予後を悪くする可能性があります。
外出が不安な方は在宅での運動も有用です。当院ホームページ上にも運動動画をアップしていますので是非ご利用ください。
内分泌・糖尿病内科部長 伏見 宣俊
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