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第11回 人工股関節置換術のリスク


(小高)
水曜日のこの時間は「健康のつボ」。40代・50代から痛みを訴える人が増えはじめ、その痛みをかばうことで、腰や膝に影響が広がることが多いという「股関節の痛み」について、一宮西病院 整形外科 股関節センター長中北吉厚(なかきた・よしあつ)先生にお話をうかがっていきます。

(小高)
『人工股関節置換術』についてうかがっていますが、この手術にはリスクはないのでしょうか?

(つボイ)
これは体内に異物を入れる訳ですし、そもそも手術をする人が高齢の方という場合も多いでしょうから、何かしら気を付けることはあると思います。

(小高)
人口股関節置換術におけるリスクについて。中北先生です。



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(中北)
大きい合併症としましてはやはりばい菌が入ってしまう『感染症』ですね。特に人工のインプラントを体の中に入れるということは、ここにばい菌が一度付いて広がってしまうと、点滴など保存的な治療では治せなくなってしまうことが多いんです。ここには血管が通っていないわけですから、再手術して全部抜いて、洗って、何ヶ月かしてまた入れて、とても治療が長期化して大変になってしまうことがあります。

(つボイ)
考えればそういうリスクもあるんでしょうけど、よっぽどないんでしょう?細菌の付いたものを入れるなんてのはね。

(中北)
インプラントそのものはきれいでも、手術室であっても完全に空気中が清潔ではないですし、後は全く別の虫歯とか足の汚いところなどから血行性によって、中からばい菌が付いちゃうこともありますし、やっぱり体が清潔でない人、肥満の人、糖尿病の人など、アトピーの人などはリスクが高いですね。

(小高)
だからそういった症状ないですか?って、診察とか手術の前に聞かれたりとかするわけですね。

(中北)
そうですね、それがまず一つ。

(つボイ)
他にどういうリスクが?

(中北)
もう一つ、これもすべての手術に共通しているのが、通称『エコノミークラス症候群』、健康な方がエコノミークラスでロングフライトをして、急に息苦しくなるみたいなことで有名なんですけれども、手術後の患者さんはリハビリがあるとはいえ、寝ている時間が長いですので、血の巡りが澱んでしまって、ふくらはぎの静脈あたりに血栓ができてしまって、それが飛んで、心臓に戻ってきてしまうと、そこから肺や脳などの大事な血管で詰まれば命に関わることがあります。手術を受けられた方は出血がありますので、血を固めようとする作用も体の中で高まっていますので、通常の生活の方よりその可能性が高くなります。

(つボイ)
これは防ぐ方法はあるんですか?

(中北)
これはですね、いつも私が患者さんにお伝えしてるのは、手術が終わって最初の24時間が一番できやすいというか危ないので、手術当日の夜ですね。麻酔が醒めてぼんやりしていても必ず足首をパタパタ動かしてくださいと、それがポンプの役割で予防になりますので、これが一番簡単でシンプルで有効な予防策だと思います。あとは機械で、フットポンプのようなものを付ける施設もありますね。

(つボイ)
ちゃんとリスク回避の方法があるんですね。

(小高)
今の二つはどんな手術にも割とあるリスクということなんですけれども、

『人工股関節置換術』特有のリスクってのはあるんですか?

(中北)
はい、特有のリスクは『脱臼』ですね。ボール(骨頭)の中心部分が屋根から外れてしまう。これが前に外れる外れ方と、後ろに外れる外れ方と大きく2種類あるんです。それは一般的には前から切って手術すると前に外れやすく、後ろから、お尻から切って入れると後ろに外れやすいと言われているんですけど、股関節の角度が前に外れる時というのは、のけぞったような形で足を外旋(がいせん)といって外に開いた時になるんですけど、そんな姿勢って普段取らないんですよね。だから前に外れるということ基本的にあまりないです。逆に、後ろというのは、足を曲げて内側に捻ると後ろに外れやすいんですけど、これは寝てる時なんかも無意識にとりますし、寝返りを打つときとかもよくとる姿勢なので、どうしても後ろに一回外れちゃうと、外れ癖がついてしまって再手術が必要となる場合が多いですね。

(小高)
こういうことってよくあることなんですか?

(中北)
これは手術のやり方ですとか、施設によって違いますけれども、私が元々勤めていた病院では1000人に1人くらいの割合でした。かなり今は手術のやり方が進歩していますので、どの施設でも脱臼率、外れる確率は下がってはいるんですけれども。

(小高)
こういったリスクのお話をしてもらうと、怖くなってやっぱりやめようかなって思うかもしれないけれども、やっぱり人工股関節を入れることによって痛みがなくなったり、生活がしやすくなったりするということを考えたら、リスクがどのくらい起こるかってこととかと天秤にかけてね。

(中北)
そうですね。

(つボイ)
私は先生がさっきリスクありますよ!って言った時には不安になりましたけど。説明聞いたら、あぁ、そういう割合のリスクかと、私は返って安心しましたよ。

(中北)
そうですね。やっぱりゼロってことはあり得ないので。全てのことにはリスクが伴うので。ただやっぱり、見込める利益と天秤にかけてみた時に、利益の方が圧倒的に大きいと思えば、私たちは手術をお勧めします。



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(つボイ)
はい、最初はリスクあると聞いてビビってましたけど、ちゃんと話を聞けば、割合としては恐れるほどのことはないようです。

(小高)
そうですね、そのリスクに対する対応もしっかり考えてもらってるようですしね。先生がおっしゃった通り、圧倒的にメリットの方が多いようですが、それでも体にメスを入れて、人工物を入れる訳ですからね、よく話を聞いて、手術を受ける場合も納得して受けることが大切ですね。

来週は、術後のリハビリについて、中北先生にお話しをうかがいます。

(小高)
さて「健康のつボ」では、いろいろな病気について専門家の先生に解説していただいております。みなさんもテーマとして取り上げてほしい病気や症状などがありましたら、このコーナーまでお寄せください。専門の先生に教えていただきます。

(つボイ)
はい、質問お待ちいたしております!

(小高)
『健康のつボ~股関節の痛みについて~』でした。


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