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前立腺がんのお話~早期発見で完治を目指す~


講演者

一宮西病院
泌尿器科部長
永田 大介

1996年、名古屋市立大学卒業。名古屋市立大学病院、豊川市民病院、名古屋市立東部医療センター、江南厚生病院を経て、2018年より一宮西病院。

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高齢化、食の欧米化により増え続ける前立腺がん

前立腺は、副腎、腎臓、精巣などと同じく泌尿器科の対象領域です。泌尿器科の疾患の中で、近年特に増えているのが、前立腺がんです。前立腺は膀胱の下にある栗の実くらいの大きさの器官で、大きく中心領域、移行領域、辺縁領域という3つのゾーンに分類されますが、前立腺がんができるのは主に辺縁領域と呼ばれる被膜の部分です。
前立腺がんと比較される疾患に、前立腺肥大症があります。前立腺がんは主に前立腺の辺縁領域(外腺)に発生するのに対し、前立腺肥大症は移行領域(内腺)が肥大する疾患です。尿道のすぐ近くにでき、尿道や膀胱を圧迫するため、尿が出にくい、尿の切れが悪いなどの症状が出現します。
前立腺がんは、初期段階ではほとんど自覚症状はありませんが、進行すると辺縁領域から尿道の方へ大きくなり、前立腺肥大症と同じような症状が現れるようになります。また骨やリンパ節へ転移することが多く、腰痛や背部痛などにより整形外科を受診した際にレントゲンを撮影し、影が見つかるというケースもあります。
前立腺がんの大きな特徴は、若年層の罹患率が極めて低いという点です。40代後半、主には50代以降から年齢を重ねるごとに患者数が増加します。2014年の統計によると、男性の部位別がん罹患数で前立線がんは4位。2020年には1位になるのではないかと予測されています。前立腺がん増加の背景としては高齢化、食生活の欧米化に加え、診断技術の進歩が挙げられます。診断技術が向上したことにより、早期のがんが発見されやすくなったのです。罹患数の多い前立腺がんですが、死亡率は他部位のがんに比べて低いという統計が出ています。がんと診断された後、5年後の生存率を比較すると、治りにくいがんと言われるすい臓がんが7.9%であるのに対し、前立腺がんは97.5%。つまり、多くの方が罹患する危険性があるものの、早期に発見すれば非常に治癒しやすく、命を落とす恐れが少ないがんといえるでしょう。

PSA値の高さに比例して前立腺がんのリスクも上昇

前立腺がんを発見するための検査、診断の流れとしては、大きくスクリーニング検査、確定診断、病期診断というステップがあります。スクリーニング検査には、PSA検査と呼ばれる血液検査、経直腸的超音波(エコー)検査、MRIによる画像診断などがあります。中でも市民検診や企業検診、人間ドックなどでおこなわれる一般的な検査がPSA検査です。
PSAは前立腺の特異なタンパク質の一種で、少量ずつ血液に流れ出ますが、PSA値が増えるほど前立腺がんの疑いが高まります。前立腺がんの重要な危険因子が年齢であるという点から、50歳を過ぎたらPSA検査をすることが推奨されています。
スクリーニング検査でがんの疑いがみられた場合、前立腺生検によって確定診断をおこないます。これは前立腺に針を刺して組織を採取し、がん細胞の有無や悪性度などを調べる検査です。次におこなうのが病期診断です。がんの転移や進行度を調べ、I期からIV期、ステージAからステージDなどに分類します。治療法を選択する際の重要な情報源となります。
CTMRIなどによる画像診断のほか、全身の骨を1枚のレントゲンに映し出し、骨への転移を調べる骨シンチグラフィーという検査も有効です。前立腺がんの転移先はおよそ85%が骨、38%がリンパ節で、比率的には低いものの、肺や肝臓に転移することもあります。前立腺がんの細胞は血液の流れにのって運ばれ、骨で栄養を吸収しながら悪性のがんへと成長し、肺や肝臓に転移していくため、骨転移への対処が鍵を握る病気なのです。

低侵襲の腹腔鏡下手術やホルモン療法などで治療

病期分類の結果をもとに、治療へと進みます。基本的にI期やII期の中で、悪性度が低い限局性がんの場合は監視療法が中心です。PSA検査を3~6ヶ月に一度おこない、値が上昇しない間は特に治療はおこないません。悪性度が高い場合や前立腺被膜外にがんが広がっている段階では、手術による外科治療、放射線治療、ホルモン療法などが選択肢になります。前立腺がんの手術では開腹手術に加え、体への負担が少ない腹腔鏡下手術が普及。腹腔鏡下手術は術後の痛みが軽度で、術後10日程度を目安に退院が可能になるため、早く社会復帰ができるなど多くの利点があります。また、ロボット支援法の導入など、技術革新も進んでいます。放射線療法では粒子線、光子線などの外部放射線療法、内部放射線療法の他、IMRT(強度変調放射線治療)という新しい照射方法も登場。腫瘍の形に応じて放射線が照射されるので、周囲の正常な組織への影響が少なく、副作用を抑えることができます。ホルモン療法は、他の治療法と併用されるケースも多く、前立腺がんは発生から増殖、成長にいたるまで男性ホルモンに依存するため、薬の服用や注射によって男性ホルモンを抑えることで、がんを餓死させていきます。
さらにリンパ節などへの転移が見られるケースでは、抗がん剤による化学療法も選択肢になります。

予防の鍵は健康的な生活 定期的な検査で早期発見を

前立腺がんの予防策としては、質・量共に良い睡眠をとる、揚げ物をできるだけ食べない、禁煙、ストレスをためない、お酒は適量を心がける、適度な運動など、健康的な生活を送ることが大前提。その他に前立腺がんの特性に応じた対策として、大豆製品(イソフラボン)やトマト(リコピン)を積極的に摂取する、排尿時の違和感を見逃さないようにするという点にも留意が必要です。さらに自覚症状がない前立腺がんにとって重要なことは、定期的にPSA検査を受けることです。早期発見をすることで治療の選択肢が広がり、治癒できる確率が格段に高まります。50歳を過ぎたら、ぜひ定期的にPSA検査を受診しましょう。

※本ページに掲載されている情報は、2019年4月時点のものです。

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