グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ


大腸の病気のお話~ご存知ですか? 炎症性腸疾患~


講演者

一宮西病院
胃腸科部長 / 消化器内視鏡副センター長
東 玲治

1999年、名古屋市立大学卒業。岡山大学病院、福山市民病院、鳥取市立病院、亀田総合病院附属幕張クリニック、広島市立市民病院を経て、2019年より一宮西病院。

⇒プロフィールの詳細はこちら


17万人がかかる潰瘍性大腸炎 20代をピークに全年齢で発症

大腸は数字の「7」のような形をしていて、盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸というパートに分かれています。働きは便を作ることで、食べ物を食べると小腸で消化されて液体の状態になり、それが大腸を通ることで徐々に固まって便として出てきます。大腸の壁は5層構造になっており、内側には粘膜があって、ここにポリープができたり炎症が起こったりします。
炎症性腸疾患は、原因がわかっているものとわかっていないものに分かれます。原因がわかっているものを感染性胃腸炎と言い、たとえば結核や赤痢などがあります。原因がわかっていないものには潰瘍性大腸炎、クローン病、ベーチェット病の3つがあり、最もかかる人が多いのが潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis; UC)です。
潰瘍性大腸炎は欧米に多い病気でしたが、近年は日本でも右肩上がりに増えており、1973年には1,000人ほどだった患者数が現在は17万人ぐらいに増加しています。発症ピークは20代ぐらいが多く、男女差はないといわれていますが、幼児や高齢者の方も発症しているので、全ての年齢でいつ発症してもおかしくない病気といえます。

症状は慢性の下痢や血便など 重症度によって異なる治療法

潰瘍性大腸炎の原因は免疫学的な異状ですが、その異常が何なのかということはわかっていません。遺伝的な素因や環境因子、腸内細菌叢のバランスなど、さまざまなことが関係して免疫学的異常が起こり、それが慢性的な炎症を起こすといわれています。主な症状は4週間以上続く慢性の下痢、血便、お腹の痛みなどで、重症化すると熱が出たり体重が減ったりすることもあります。
病期は排便回数や血便の量、熱、貧血などによって、軽症・中等症・重症・劇症に分類され、重症度に応じて治療方針が決まります。潰瘍性大腸炎が完全に治ることは稀で、継続的な治療が必要となり、重症になると緊急手術が必要になることもあります。
診断は問診や診察、血液検査、便の検査、お腹のレントゲン検査などをおこない、潰瘍性大腸炎の疑いがあれば必ず大腸内視鏡(大腸カメラ)検査を行います。1回の大腸カメラで診断が付くこともありますが、なかには診断が付きにくく確定が難しいケースもありますので、CTやエコー検査で別の病気の可能性も考慮しながら診断します。患者さんの身体に負担をかけない診療をおこなうことを、専門医は常に心がけています。

薬で良くして状態を維持 身体状態などにより使い分け

潰瘍性大腸炎は良くなったり(寛解)、悪くなったり(再燃)を繰り返す特徴があります。ですから再燃を寛解に持ち込み、その状態をお薬で維持するというのが治療の基本的な考え方になります。治療は3つのパートに分かれていて、まず悪い状態を良くする寛解導入療法をおこない、次に落ち着いた状態を長く維持する寛解維持療法、そしてお薬が効かない場合は手術をおこないます。
寛解導入療法では厚生労働省が出している治療方針があり、重症度と病変範囲によって使うお薬が変わります。薬は大きく分けて5-ASA製剤(アミノサリチル酸製剤)とステロイド剤があり、一番始めに出すのが5-ASA製剤で、主成分が腸の炎症を抑えるといわれています。次に使うのがステロイド剤です。免疫を抑える作用があり、ステロイド剤だけで7割程度改善しますが、高齢の方に多くの量を使うと感染症を引き起こすこともあるため、身体の状態や背景の因子などに応じて使い分けます。

重度の場合は手術で治療 罹患期間10年以上は要注意

ステロイド剤でも良くならない潰瘍性大腸炎を難治性といい、お薬以外の治療をおこないます。代表的なものが透析による血球成分除去療法で、副作用がなく免疫を抑えることもないため高齢の方に向いています。ただ、この治療法で良くなる割合は1割程度なので、お薬と併用して治療をおこなっていきます。
そして非常に重症で内科的治療が難しい場合には手術をおこないます。腸の粘膜が残ると再び潰瘍性大腸炎を発症してしまうため、手術では腸を全て取ります。小腸と肛門をつなぐと下痢がひどくなるので、出口の部分が少し袋状になるよう工夫をします。
潰瘍性大腸炎に罹患している期間が長いほど、大腸がんの発生率が高くなることがわかっています。罹患期間が10年以上にわたる方は、1年に1回は大腸カメラ検査を受けるようにしてください。潰瘍性大腸炎を抑えることが大腸がん発症の抑制につながります。

よくある質問

Q. 憩室(けいしつ)が6ヶ所あります。憩室について教えてください。
A. 憩室というのは腸の壁が薄くなって外に飛び出して窪みのようになった状態をいいます。憩室炎でお腹が痛くなったり、憩室出血を起こしたりすることがあります。予防方法はまだ確立されていないため、腹痛や出血があったら病院で診察を受けてください。

Q. 便秘症ですが病的なものかどうかを知りたいです。
A. 進行した大腸がんで便秘になることがあるので、大腸カメラでの検査をおすすめします。大腸がんがなければ腸の動きの問題ですので、便を柔らかくするお薬や胃腸を動かすお薬など薬物療法を使うのがベストではないかと思います。

Q. 便潜血検査と大腸カメラは何年ごとに受ければいいでしょうか。また、薬物治療の話に出てきた感染症というのは、たとえばどういうものがありますか。
A. 便潜血検査はできれば毎年受けてください。大腸がんはゆっくり大きくなるので検査で見つかる可能性があります。大腸カメラは3年に1回をおすすめします。感染症というのは、ばい菌が入って起こる病気のことで、たとえば肺炎や膀胱炎などがあります。免疫を抑えるお薬を使うと体の免疫力を落とすため感染症が起きます。状況に応じてさまざま感染症があることをご理解ください。

※本ページに掲載されている情報は、2019年10月時点のものです。

  1. ホーム
  2.  >  病院紹介
  3.  >  市民公開WEB講座
  4.  >  大腸の病気のお話~ご存知ですか? 炎症性腸疾患~