乳がんの基礎知識~乳がんの特徴、検査と診断~
約90%が乳管から発生 乳がん発生のピークは40代と60代
乳がんの特徴、乳がんの検査と診断、遺伝性乳がんについてお話しします。まずは乳がんの特徴についてです。乳腺は、母乳を作る「小葉」と、母乳の通り道「乳管」から構成されています。乳がんは小葉や乳管の細胞の遺伝子異常によって発生し、約90%が乳管から発生すると言われています。また、乳がんの倍加速度(がんの大きさが2倍になるまでにかかる時間)は90~100日ほどといわれ、1cm程度のしこりになるには理論上、約7年かかると言われています。ただ、増殖能の高い乳がんもあり、その場合は短期間で急速に大きくなることもあります。乳がんの発症年齢ですが、日本人は40代と60代にピークがあり、右肩上がりに増加して60代でピークになる海外と比べると、独特な特徴があるといわれています。
主な発症要因は環境と遺伝 危険因子によってはリスク3倍
乳がんの発症要因には、環境要因と遺伝要因の2つがあります。主な危険因子は環境要因で、たとえば飲酒や喫煙、肥満、そのほか女性ホルモンに関係する、出産・授乳経験がない、初産年齢が高い、初経年齢が早い(11歳以下)、閉経年齢が遅い(55歳以上)などがあります。危険因子がない場合と比較すると、出産・授乳経験がない方は3倍、肥満の方は1.5~2倍、家族歴のある方は3倍にリスクが増えるといわれています。遺伝要因については後ほど詳しくお話しします。
検査の基本は視触診とマンモ 高濃度乳房にはエコー併用
次は乳がんの検査法と診断についてです。検査の基本は視触診です。目で見てくぼみがないか、手で触れてしこりがないか、乳頭からの分泌物がないかなどをチェックします。長所は機器が必要ないためどこでも検査ができ、被ばくの心配もないこと。短所は、手の感覚に頼るためある程度の大きさでないとわからないことです。
乳房専用のレントゲン装置を使ったマンモグラフィ検査は、触診でわからない大きさのしこりや、石灰化がよくわかるという長所があります。石灰化というのはカルシウム成分が沈着したもので、良性と悪性があり、悪性はがん細胞が石灰化したものです。マンモグラフィの短所は乳房を挟むため痛みを伴うことや、X線による被ばくを伴うため妊娠中の方は受けられないことが挙げられます。乳腺組織は年齢と共に脂肪に置き換わることから20~30代の方は高濃度乳房や不均一高濃度乳房が多く、マンモグラフィ検査をおこなっても乳腺組織としこりが判別できないことがあります。ですから、高濃度乳房や若年者の方にはエコー(超音波)検査の併用を推奨しています。
エコー検査の長所は、X線による被ばくがないため妊娠中の検査が可能なこと、触診ではわからない2~3mmのしこりや乳管のなかの病変までわかること。ただ、石灰化に関してはほとんど見えず、検査をおこなう人の技量によって精度が変わるなどが短所として挙げられます。また、検診における死亡率減少効果がまだ証明されていないのが現状です。
マンモグラフィ検査はどなたも受けていただき、乳腺濃度が高濃度の方はエコー検査併用がおすすめです。
乳房専用のレントゲン装置を使ったマンモグラフィ検査は、触診でわからない大きさのしこりや、石灰化がよくわかるという長所があります。石灰化というのはカルシウム成分が沈着したもので、良性と悪性があり、悪性はがん細胞が石灰化したものです。マンモグラフィの短所は乳房を挟むため痛みを伴うことや、X線による被ばくを伴うため妊娠中の方は受けられないことが挙げられます。乳腺組織は年齢と共に脂肪に置き換わることから20~30代の方は高濃度乳房や不均一高濃度乳房が多く、マンモグラフィ検査をおこなっても乳腺組織としこりが判別できないことがあります。ですから、高濃度乳房や若年者の方にはエコー(超音波)検査の併用を推奨しています。
エコー検査の長所は、X線による被ばくがないため妊娠中の検査が可能なこと、触診ではわからない2~3mmのしこりや乳管のなかの病変までわかること。ただ、石灰化に関してはほとんど見えず、検査をおこなう人の技量によって精度が変わるなどが短所として挙げられます。また、検診における死亡率減少効果がまだ証明されていないのが現状です。
マンモグラフィ検査はどなたも受けていただき、乳腺濃度が高濃度の方はエコー検査併用がおすすめです。
初発症状はしこりが最多 月1回は自己チェックを
近年、画像検査などが進歩して乳がんを早期発見できるようになっていますが、最も多いきっかけは自己発見です。初発症状は、どの年代でも痛みのないしこりが多く、乳房痛や乳頭分泌などの症状でも見つかっています。乳腺外来の患者さんのなかには、乳房痛で乳がんを心配されて受診される方もおられますが、乳房痛は女性ホルモンのバランスによって起きるものが大半で、乳がんの初発症状としては10%を切る程度です。毎月1回、生理が終わった4~5日目を目安に、閉経後の方は毎月決まった日に、自己チェックをおこなうことをおすすめします。
遺伝性乳がんは乳がん全体の10%程度
さて、最後に遺伝要因の乳がんについてお話しします。最近話題になっているのが、遺伝性乳がん卵巣がん症候群、通称「HBOC」といわれるがんです。原因は「BRCA1/2遺伝子」という遺伝子の病的変異で、年間約9万人の乳がん罹患患者数のうち約10%程度、約9千人がHBOCで発症するといわれています。BRCA1/2遺伝子の病的変異は2分の1の確率で親から子に受け継がれます。では、BRCA1/2遺伝子に病的変異を持つ方が、乳がんや卵巣がんにかかる確率はどの程度かというと、乳がんに関しては、遺伝要因のない方の発症が12人に1人なのに対し、家族歴のある方は2~4倍、BRCA1/2遺伝子に病的変異を持つ方は6~12倍、80%近い方が発症すると言われています。また、BRCA1/2遺伝子に病的変異を持つ方の50~60%程度が卵巣がんを発症するとも言われています。乳がん全体から見るとHBOCの割合は5~10%と高くないので、それほど心配する必要はありませんが、BRCA1/2遺伝子に病的変異があると乳がんの発症率が高くなるので、そういった要因のある方は20代のうちから医療機関で検診を受けることをおすすめします。乳がんは適切な治療によってかなりの確率で治癒が望めます。最低2年に1回はマンモグラフィ検査を受け、乳がんの早期発見、早期治療に努めましょう。
※本ページに掲載されている情報は、2019年4月時点のものです。