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眼瞼下垂


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「まぶたが重い」「視界が狭い」──それは眼瞼下垂のサインかもしれません。
視界の改善だけでなく、肩こりや頭痛の原因にもつながる眼瞼下垂について詳しく解説します。

眼瞼下垂とは

「最近、まぶたが重くて開けづらい」「視界が狭くなった気がする」「夕方になると頭痛や肩こりがひどい」──こんな症状に心当たりはありませんか? これらは眼瞼下垂の症状かもしれません。

眼瞼下垂とは、まぶたが正常な位置よりも下がり、目が開けにくくなる状態を指します。先天性のものと加齢などによる後天性のものなどがあり、若い世代であってもコンタクトレンズの長期使用やまぶたをこする癖などが原因となって起こることがあります。

まぶたが下がることで視界が狭くなるだけでなく、無意識のうちにおでこの筋肉を使って目を開こうとすることでおでこのシワや頭痛、肩こり、眼精疲労の原因になることもあり、日常生活に大きく影響を与えます。

こんな症状はありませんか?

最近、上のほうが見えづらい…
友人に「まぶたが下がってきてない?」って言われた…
ふと気づくと、あごを上げてテレビを見ていた…
まぶたが下がったことによる症状
  • 視界が狭くなる
  • 眠そうにみえる、表情が暗くみえる
  • まぶたの開閉がスムーズにできない
夕方になると頭が痛かったり、首がこったりする…
おでこで目を開けようとする
はたらきによる症状
  • 目を大きく開けようとして、おでこにシワができる
  • 目が疲れやすい、頭痛や肩こりがある

眼瞼下垂の原因は?

眼瞼下垂の原因は、生まれつきまぶたを上げる筋肉の力が弱い先天性のもの、加齢などによる後天性のもの、そして筋肉や腱には異常がみられない偽眼瞼下垂の大きくわけて3つに分類されます。

生まれつきの先天性のもの

生まれつき筋肉の力が弱い
  • 先天性眼瞼下垂
    生まれつきまぶたを上げる筋肉の力が弱いことで起こります。片目または両目にみられ、目を開けようとしてあごを上げる姿勢をとることが多くなります。また、視力の発達にも影響を及ぼすことがあり、片目のみの場合、視界が狭くなることで弱視につながるリスクもあります。

⇒前頭筋吊り上げ術

加齢などによる後天性のもの

正常な眼瞼

腱膜性眼瞼下垂

目を開ける筋肉の膜の問題
  • 腱膜性眼瞼下垂
    まぶたを上げる筋肉(眼瞼挙筋)の力は正常であるものの、その筋肉とまぶた(腱板)をつなぐ膜(挙筋腱膜)が加齢や摩擦、刺激などの影響で伸びたり、腱板から外れたりして、目が開きづらくなります。これは後天性眼瞼下垂の中で最も多くみられるタイプです。特に60歳以上の方に多くみられますが、40~50代の方であっても目をこする癖があったり、ハードコンタクトレンズの使用歴がある方は注意が必要です。

⇒眼瞼挙筋前転法

その他の疾患によるもの
  • 重症筋無力症
    全身の筋力が低下する自己免疫性疾患
  • 顔面神経麻痺
    目を開ける力はあるが、おでこを上げる力や目を閉じる力が弱くなった場合、皮膚・皮下組織が垂れ下がってくることがある
  • 動眼神経麻痺
    脳梗塞脳動脈瘤、神経の虚血などによる影響で、目を開ける筋肉を支配する動眼神経が麻痺する

筋肉や腱は正常な偽眼瞼下垂

まぶたを上げる筋肉(眼瞼挙筋)や腱は正常でも、まぶたの皮膚や脂肪がたるんだりすることで、眼瞼下垂のように目が開きづらくなる状態を偽眼瞼下垂といいます。
皮膚のたるみの問題
  • 眼瞼皮膚弛緩症
    まぶたの皮膚が加齢やその他の要因によってたるみ、目に覆いかぶさることで視界を遮る状態。眼瞼下垂がまぶたを持ち上げる筋肉の問題によって生じるのに対して、主に皮膚のたるみが原因となります。

⇒余剰皮膚切除術


眼瞼下垂を放置するとどうなる?

眼瞼下垂を放置すると、視界の狭まりや慢性的な目の疲れ、頭痛や肩こりが悪化する可能性があります。また、おでこの筋肉を過剰に使うことで、おでこのシワが深くなり老けた印象を与えることもあります。症状が気になる場合は、早めに専門医へ相談することをおすすめします。
気づかないうちに徐々に悪化

眼瞼下垂はゆっくりと進行するため、自覚しづらいことが特徴です。気がついたときには視界が狭くなり、日常生活に影響を及ぼしていることもあります。

事故やケガにつながりやすい

視野が狭くなることで、段差につまずいたり、車の運転中に左右の確認がしづらくなったりするリスクが高まります。

頭痛・肩こり・慢性的な疲労

視界を確保しようと無意識におでこや首の筋肉を使うため、慢性的な頭痛や肩こり、疲労感が生じることがあります。

免許の更新に影響する可能性

十分な視界が確保できない場合、運転免許更新の際の視力検査に影響して、更新が困難になることがあります。

眼瞼下垂の診断方法

1. 問診
2. 視診
3. 触診
眼瞼下垂の診断は、問診や視診を中心におこなわれ、必要に応じて各種検査が実施されます。これらの診察で眼瞼下垂の原因と程度を診断し、保険適応範囲内の症状を呈している方については、保険での眼瞼下垂症手術をおこなうことができます。

また、診察のうえ、重症筋無力症などの脳・神経疾患による眼瞼下垂が疑われる場合は、専門科に精査をお願いすることになります。

1. 問診

患者さまの症状や生活習慣について詳しく聞き取りをおこないます。
  • いつからまぶたが下がりはじめたか
  • どのくらい困っているのか
  • 視界が狭い以外に症状はないか
  • 一日の中で見え方に大きな差はないか
  • ハードコンタクトレンズ使用歴の有無
  • 目をこする癖はないか など

2. 視診

実際にまぶたの状態を観察し、次のポイントを確認します。
  • 左右のまぶたの開き具合の差異
  • まぶたの下がり具合(MRD-1)
    正面を見た状態で、瞳孔の中心からまぶたの縁までの距離=MRD値を測定

正常
MRD値 2.7~5.5mm

軽度下垂
MRD値 1.5~2.7mm

中等度下垂
MRD値 -0.5~1.5mm

重度下垂
MRD値 -0.5mm以下

MRDとは

MRD-1

MRD(Margin Reflex Distance; 瞼縁角膜反射間距離)とは瞳孔の中心からまぶたの縁までの距離のことで、まぶたの開き具合を数値化するために用いられる指標です。

  1. MRD-1(上眼瞼の位置)
    MRD-1とは、瞳孔の中心から上まぶたの縁までの距離を測定したものです。MRD-1が低いほど視界が狭くなり、目を大きく開けようとすることでおでこのシワや頭痛・肩こりの原因になることがあります。

  2. MRD-2(下眼瞼の位置)
    MRD-2とは、瞳孔の中心から下まぶたの縁までの距離を測定したものです。MRD-2は主に下眼瞼の異常(外反・内反など)の評価に使用されますが、眼瞼下垂と関連して測定されることもあります。

MRDの測定は、眼瞼下垂の重症度を客観的に評価するために欠かせない検査です。治療方針を決定する上でも重要な指標となるため、診察時には必ず確認されます。

3. 触診

眼瞼挙筋機能検査

まぶたを持ち上げる力(眼瞼挙筋機能)を測定し、筋肉の動きを評価します。眉毛の上をおさえ、おでこの力を使わない状態で、最も下を見たときと最も上を見たときのまぶたの縁の移動距離を確認します。

ブジー検査など

眼瞼挙筋が正常に機能しているか、皮膚のたるみが原因かを確認します。検査はブジー(細い金属製の器具)もしくは指でまぶたを上げておこないます。

眼瞼下垂の治療

眼瞼下垂の原因によって、適した手術方法を選択します。

眼瞼挙筋前転法余剰皮膚切除術をおこなう際は、まぶたに注射をする局所麻酔(いわゆる部分麻酔)を用いて、左右同時におこなうことが一般的です。手術時間は両目で1時間から1時間半程度で、術後1週間で抜糸をおこないます。
手術後は麻酔や出血の影響で腫れが生じるため、最低でも1泊2日の入院をおすすめしています。ただし、日帰り手術を希望される場合には、片目ずつ手術をおこなうことも可能です。術後の強い腫れは1週間程度で落ち着きますが、腫れぼったさが完全に引くまでには3ヶ月程度かかることが多く、完成までには3ヶ月から半年程度の経過を要します。

眼瞼挙筋前転法

1. 皮膚を切開し、挙筋腱膜を切離

2. 挙筋腱膜を引っ張り出す

3. 挙筋腱膜を瞼板に糸で固定

目を開ける筋肉の膜(挙筋腱膜)の問題に対しては、主に眼瞼挙筋前転法をおこないます。この手術では、伸びてしまった・外れてしまった腱膜を適切な位置まで引っ張り出し、腱板に糸で固定します。また、皮膚のたるみも合併していることが多いため、固定する際にまぶたの皮膚の切開もおこないます。

腱膜が適切な位置に固定されると、目を開ける筋肉(眼瞼挙筋)の力がまぶたの先端まで伝わり、目がしっかりと開くようになります。

余剰皮膚切除術

上眼瞼皮膚切除術

眉毛下皮膚切除術(眉下切開)

皮膚のたるみのみの方に対しては、余剰皮膚切除術をおこないます。 余分な皮膚を取り除く手術で、まぶたの皮膚を切る方法と、眉毛の下の皮膚を切る方法があります。

前頭筋吊り上げ術

まぶたと眉上を切開して連結

瞼板と前頭筋を連結

生まれつき目の開きが弱い方加齢や病気・外傷などの原因で目を開ける筋肉が弱ってしまった方に対しては、前頭筋吊り上げ術をおこないます。この術式では、まぶたとおでこの筋肉(前頭筋)を連結し、おでこの力を利用してまぶたを引き上げられるようにすることで、目を開けやすくします。

手術は局所麻酔(まぶたへの注射)でおこないますが、小児の場合は全身麻酔での実施となります。手術時間は、大腿から筋膜を移植する場合、片目で約1時間半から2時間程度。術後は、麻酔や手術による出血の影響で腫れが生じるため、最低でも1泊2日の入院をおすすめしています。その後の経過を見ながら、1週間後に抜糸をおこないます。

また、2歳以下のお子さまで視力の発達に影響を及ぼす可能性がある場合には、一時的に糸で吊り上げる処置をおこなうこともあります。

その他の治療について

顔面神経麻痺などのほかの疾患にともなう眼瞼下垂については、症状の原因や出方によって治療方法が異なります。症状の種類が多岐にわたるため、具体的な治療法については、診察の際に医師へご相談ください。

眼瞼下垂に関するよくある質問

Q. 手術中に声が聞こえるのが怖いので、全身麻酔で手術できませんか?
不可能ではありませんが、術中に目を開けたり閉じたりしていただきながら目の開き具合を調整するので、局所麻酔の方が満足いく結果が得られると思います。
Q. いかにも手術をしましたというまぶたになりたくない・・・
二重の食い込み具合はある程度調整できるので、あまりぱっちりとした仕上がりにしたくないようであれば、そのように二重幅の調整や縫合をさせていただきます。
Q. 白内障手術やレーシック手術の予定があるのですが、眼瞼手術とどちらを先におこなうべき?
一般的には、白内障手術やレーシック手術よりも先に眼瞼手術をおこなうことが推奨される場合が多いです※1。なぜなら、視力矯正手術の結果によって、まぶたの開き具合や見え方に変化が生じたり、眼瞼手術によって眼の屈折状態が変化する可能性があるためです。
どちらの手術を先におこなうべきかは、医師の診察を受けたうえで、症状や治療の優先度を考慮して決定することが重要です。

まとめ

眼瞼下垂は、見た目の変化だけでなく、視界の狭まりや全身の不調につながることがあります。気づかないうちにゆっくりと症状が進行するため、早めに適切な診断と治療を受けることが大切です。
手術によって視界が広がり、日常生活の質が向上する可能性があります。まぶたの重さや目の疲れが気になる方は、ぜひ一度専門医に相談してみてください。

出典
※1)日本眼科医会ホームページ「眼瞼下垂に悩むかたへ

コラム監修

一宮西病院
形成外科部長
野田 慧

2013年、横浜市立大学卒業。横須賀共済病院で初期研修。藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)、小嶋病院、豊川市民病院、市立伊勢総合病院を経て、2023年より一宮西病院。

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※本ページに掲載されている情報は、2025年2月時点のものです。