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慢性閉塞性肺疾患(COPD)


推定患者数が500万人を超えるとされている、慢性閉塞性肺疾患=COPD。
認知度不足が問題とされており、日本では年間約1万6千人の方が亡くなっています。

COPDとは

慢性気管支炎と肺気腫の総称

慢性閉塞性肺疾患(COPD; Chronic Obstructive Pulmonary Disease)は、主に喫煙や環境の影響によって引き起こされる進行性の呼吸器疾患です。肺の気流が阻害され、息切れや慢性的なせき、喀痰(かくたん)の増加などの症状を引き起こします。COPDには、慢性気管支炎と肺気腫が含まれますが、多くの場合、両者が組み合わさって症状が現れます。

日本では年間約1万6千人※1の方が亡くなっており、日本人男性の死亡原因第9位※1となっています。
COPDの定義
タバコ煙を主とする有害物質長期に吸入曝露することなどにより生ずる肺疾患であり、呼吸機能検査で気流閉塞を示す。気流閉塞は末梢気道病変気腫性病変がさまざまな割合で複合的に関与し起こる。臨床的には徐々に進行する労作時の呼吸困難慢性の咳・痰を示すが、これらの症状に乏しいこともある
(日本呼吸器学会「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2022〔第6版〕」より)
たばこを吸っていた方が、年齢を重ねてから息切れ・せき・たんを起こす病気
日本人の死因順位
(2021年)
順位 分類 総数
(人)
1 悪性新生物<腫瘍> 381,505
2 心疾患(高血圧性を除く) 214,710
3 老衰 152,027
4 脳血管疾患 104,595
5 肺炎 73,194
6 誤嚥性肺炎 49,488
7 不慮の事故 38,355
8 腎不全 28,688
9 アルツハイマー病 22,960
10 血管性及び詳細不明の認知症 22,343
11 間質性肺疾患 20,774
12 自殺 20,291
13 大動脈瘤及び解離 19,351
14 肝疾患 18,017
15 慢性閉塞性肺疾患(COPD) 16,384
出典: 厚生労働省「人口動態統計」(2021年)

認知度の向上が課題

500万人以上※2いるとされているCOPDの推定患者のうち、診断・治療を受けている患者数はおよそ22万人※3と少なく、大多数の患者が未診断・未治療のまま、日々を過ごしていることになります。その原因のひとつとして、“COPDの認知度不足”が問題とされています。
COPD認知度の推移

出典: 一般社団法人GOLD日本委員会「COPD認知度把握調査」(2013年)

これを受けて厚生労働省は、21世紀に向けた国としての健康づくりの取り組みである“健康日本21(第二次)”において、COPDをがん・循環器疾患・糖尿病と並ぶ主要取組疾患として位置づけ、COPDの認知度向上に取り組む方針を示しました。
健康日本21(第二次) COPD目標
目標 COPDの認知度の向上
現状値(参考値) 30.1% (平成26年度)
目標値 80% (平成34年度)
②生活習慣病の発症予防と重症化予防に関する目標 生活習慣病の予防 がん ①75歳未満のがんの年齢調整死亡率の減少
②がん検診の受診率の向上
循環器疾患 ①脳血管疾患・虚血性心疾患の年齢調整死亡率の減少
②高血圧の改善(最高血圧の平均値の低下)
③脂質異常症の減少(総コレステロール240mg/dL以上の者の割合の減少)
④メタボ予備群・メタボ該当者の減少
⑤特定健診・特定保健指導の実施率の向上
糖尿病 ①合併症(糖尿病性腎症による年間新規透析導入患者数)の減少
②治療継続者の割合の増加
③血糖コントロール指標におけるコントロール不良者の割合の減少(HbA1cがJDS値8.0%[NGSP値8.4%]以上の者の割合の減少)
④糖尿病有病者の増加の抑制
⑤メタボ予備群・メタボ該当者の減少
⑥特定健診・特定保健指導の実施率の向上
COPD ①COPDの認知度の向上
出典: 厚生労働省「健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料」(2012年)

COPDのメカニズム

たばこの煙などの有害物質が肺を刺激しつづけることで、気管支が炎症を起こします。こういった炎症がつづくと気管支の粘膜・壁が肥厚し、空気の通り道が狭くなると同時に分泌物(たん)が増加して、せきやたんが多くなります。
さらに有害物質が肺胞まで達して炎症を起こすと、肺胞の壁が破壊されて空気をうまく吐き出せなくなるため、息切れを起こしやすくなるのです。

主な原因は“喫煙”

COPDの主な原因は喫煙であり、長期間の喫煙が重症度を増加させるとされています。有病率は喫煙歴のある高齢者に多く、60代の7人に1人、70代の4人に1人※2はCOPD患者だといわれています。

また、喫煙によらない場合でも大気汚染、職場の有害物質(化学物質、ほこり)、遺伝的要因(遺伝的な肺の形状、免疫系の遺伝的な変異など)も、COPDのリスクに寄与する可能性があります。

症状と診断

息切れ

せき・たん

COPDの主な症状には、息切れ、慢性的なせき、たんの増加などが含まれます。こういった症状があり、なおかつ40歳以上喫煙歴がある場合には、COPDが疑われます。
診断は、患者さまの症状や喫煙歴の詳細な評価をもとに、肺機能検査や画像診断(X線、CT)、動脈血ガス分析などをおこないます。

*肺機能検査=マウスピースを通して、機械に向かって大きく息を吸ったり吐いたりすることで、肺の機能を評価する検査

COPDの治療

破壊されてしまった気管支や肺の構造を元に戻す治療は今のところありません。そのため、COPDの治療は、症状の管理と疾患の進行を遅らせることを目的としておこないます。

病態は多くの場合進行性であり、長期管理を要するため、管理目標の設定が重要である。十分な管理は、症状およびQOLやADLの改善に加え、増悪を予防し、患者の将来リスク(疾患進行、死亡率)の低減にもつながると期待される。
COPDの管理目標
I. 現状の改善
①症状およびQOLの改善
②運動耐容能と身体活動性の向上および維持

II. 将来リスクの低減
①増悪の予防
②疾患進行の抑制および健康寿命の延長

*現状および将来リスクに影響を及ぼす全身併存症および肺合併症の診断・評価・治療と発症の抑制も並行する。
出典: 日本呼吸器学会「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2022〔第6版〕」

COPDに対する治療例
禁煙
COPDの最大の原因であるたばこをやめることは、進行を抑える上でとても効果的です。
薬物療法
気管支の筋肉を緩めたり、気管支や肺の炎症を取り除いたりする薬剤を用います。
理学療法
腹式呼吸などの呼吸法や、胸部の柔軟性を向上させる訓練をします。
ワクチン
COPD患者がインフルエンザや肺炎などの感染症にかかると、健康な方と比べて重篤になりやすく、命にかかわることもあります。ワクチン接種により、COPDの悪化による死亡率を約50%低下させることが報告されています。
COPDの治療と増悪予防として、喫煙者には禁煙が推奨され、薬物療法や酸素療法などの非薬物療法が使用されます。また、呼吸リハビリテーションや定期的な運動療法も重要です。症状が進行する場合には、換気補助療法や外科療法などの選択肢も検討されます。

COPDの増悪

COPDの増悪とは、息切れの増加、せきやたんの増加、胸部不快感・違和感の出現あるいは増強などの症状がみられ、これまで安定していた治療では症状が改善せず、治療の変更が必要となる状態のことをいいます。
増悪することによって、生命予後の悪化、入院回数の増加、心血管系イベントの発生リスク増加、呼吸機能の低下などのデメリットがあります。増悪を予防するためにも、禁煙、適切な薬の吸入、栄養管理、適正体重の維持、体力の維持、感染予防(マスク、手洗いなど)を心がけることが大切です。

COPDを予防するには

何よりも禁煙、そして早期発見・治療介入が大事

COPDを含む呼吸器疾患の予防には、禁煙することが最も重要です。喫煙者が禁煙することで肺機能が完全に改善されるわけではありませんが、早期の禁煙で病気の進行を遅らせることができます。また、職場での有害物質への曝露を避け、空気の質を保つことも予防策の一環です。症状が現れる可能性がある方は、早期に医師の診察を受けることを推奨します。

死亡率減少のために

“健康日本21(第二次)”での目標「COPDの認知度向上8割」が未達(34.6%(2022年))で終わったことも踏まえて、“健康日本21(第三次)”ではCOPDの死亡率減少が目標として掲げられました。
健康日本21(第三次) COPD目標
指標 COPDの死亡率
データソース 人口動態調査(確定数)
現状値 13.3 (令和3年)
目標値 令和6年人口動態統計(確定数)の値を採用予定
目標値 10.0 (令和14年度)
日本呼吸器学会では、「早期受診の促進」「診断率の向上と適切な治療介入」の実行モデルを提唱し、自治体などさまざまな取り組みをサポートしていくことを目標としました。
新型たばこは大丈夫?
新型たばことは、電子・加熱式たばこを指します。多くの方が持っているであろう“新型たばこは従来のたばこと比べて害が少ない”というイメージ…実はそれは真実ではありません。

“有害物質の含有量が格段に減っているはず”と思っていませんか? でも実際は減っている物質もあれば、増えている物質もあるんです。未知の有害物質が多く含まれており、疾患リスクを減らせるかどうかも不明。受動喫煙リスクもあるし、有害な煙は出ているんです(化粧品と比べるとはるかに多い)。また、ニコチンも含まれているため、結局はニコチン依存のリスクもあります。

長期的なデータはなく、まだわからないことだらけです。長期使用によるCOPD発症が生じる可能性もあるため、使用には注意が必要です。

まとめ

肺にはたくさんの病気がありますが、どんな病気も予防するには何よりも禁煙。一般的な認知度が低いCOPDですが、たくさんの患者さんがいます。早く発見して、適切な対処をすることで健康寿命を延長できます。
肺ドックなどで肺機能検査をおこなうことで、早期に病気を発見できる可能性もありますので、ぜひ一度受診してみてください。

出典
※1)厚生労働省「人口動態統計」(2021年)
※2)Fukuchi Y. et al.: Respirology. 9: 458-465, 2004
※3)厚生労働省「患者調査」(2017年)

コラム監修

一宮西病院
副院長 / 呼吸器内科部長
竹下 正文

2003年、九州大学卒業。九州大学病院、北九州市立医療センターを経て、2019年より一宮西病院。

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※本ページに掲載されている情報は、2024年7月時点のものです。
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