インフルエンザの予防接種
新型コロナウイルス、インフルエンザはともに発熱や咳、倦怠感など非常に似た症状がみられます。
そのため、インフルエンザへの対応がとても重要になってきます。
そのため、インフルエンザへの対応がとても重要になってきます。
インフルエンザワクチンが効かなかった?
2020年夏の時点で、しっかりとした医学的根拠のある新型コロナウイルスのワクチンは未だ流通していません。一方、インフルエンザにはワクチンがあります。インフルエンザワクチンというと「予防接種したのにインフルエンザになったから効かなかった」という声をチラホラと聞いた人もあるかと思います。インフルエンザワクチンは本当に効果がないのでしょうか?
最も効果のある方法
インフルエンザワクチンには、インフルエンザの患者を61%減らしたり※1、高齢者の死亡を48%減らす※2など、非常に大きな効果があることがわかっています。どんな薬を使うことよりも効果があることから、世界保健機関(WHO)は、ワクチン接種を“The most effective way(最も効果のある予防法)※3”としています。
集団免疫
WHOをはじめ、世界各国がなぜインフルエンザのワクチン接種を推奨しているかというと、実は日本のある研究が注目されているからです。かつて日本ではインフルエンザワクチンの接種が義務化されていた時期があり、そのときの接種率は96.5%もありました。ところが予防接種の副反応で後遺症が出たとして国が訴えられ、敗訴するといった判例が続出したために日本は方針転換を余儀なくされ、準強制接種から任意接種となりました。
副反応に対する世の中の正しい理解が進まなかった背景もあり、多くの報道から接種率はほぼ0%まで落ち込んでしまいました。接種率が下がったことによって、インフルエンザ脳症という恐ろしい病気で子どもたちが亡くなったり、免疫を持っている人が少ないために、本来若者との交流が少なくかぜを引きにくいはずの高齢者がインフルエンザにかかるようになりました。高齢者施設では流行したインフルエンザによって多くの方が亡くなりました。
子どもたちが集団接種をしていれば守れたはずの命は、年間37,000~49,000人もあったと報告されています※4。
副反応に対する世の中の正しい理解が進まなかった背景もあり、多くの報道から接種率はほぼ0%まで落ち込んでしまいました。接種率が下がったことによって、インフルエンザ脳症という恐ろしい病気で子どもたちが亡くなったり、免疫を持っている人が少ないために、本来若者との交流が少なくかぜを引きにくいはずの高齢者がインフルエンザにかかるようになりました。高齢者施設では流行したインフルエンザによって多くの方が亡くなりました。
子どもたちが集団接種をしていれば守れたはずの命は、年間37,000~49,000人もあったと報告されています※4。
集団接種の意外な効果
子どもたちへの集団接種には、興味深い結果もあります。接種率が高いときと低いときでは、学級閉鎖の日数が大きく違うというのです。強制接種がおこなわれていたときの学級閉鎖日数は、年間で平均1.3日でした。ところが接種率が0%に近いときの学級閉鎖日数は年間で20.5日にもなったというのです※5。
時期 | ワクチン接種率 (平均) |
学級閉鎖日数 (平均) |
強制接種 (1984-1987年) |
96.5% | 1.3日 |
準強制接種 (1988-1994年) |
66.5% | 8.3日 |
ほぼ未接種 (1995-1999年) |
2.4% | 20.5日 |
任意接種が低い時期 (2000-2003年) |
38.9% | 9.25日 |
任意接種が高い時期 (2004-2007年) |
78.6% | 7日 |
ワクチンの効果には感染そのものを減らす以外にも、集団で免疫をつけることによって高齢者や病気の人を守ったり、学級閉鎖を減らすなど社会的な活動を妨げにくくする効果もいわれているのです。
ウィズコロナ時代の予防接種
ワクチンには大なり小なり副反応がつきものですが、新型コロナウイルスから社会全体を守るためにも、インフルエンザワクチンによる予防接種は今後ますます重要になってくると考えられています。特に高齢者や、体の臓器に基礎疾患のある人などは、インフルエンザのワクチン接種が強く推奨されます。冬になる前に、お近くのかかりつけ医とご相談いただくことをおすすめいたします。
出典
※1)Jackson, Michael L.; Chung, Jessie R.; Jackson, Lisa A.; et al. (2017)“. Influenza Vaccine Effectiveness in the United States during the 2015‒2016 Season”. New England Journal of Medicine 377 (6): 534‒543.
※2)Nichol KL, Nordin JD, Nelson DB, Mullooly JP, Hak E. Effectiveness of influenza vaccine in the community-dwelling elderly. N Engl J Med. 2007;357(14):1373-1381.
※3)WHO seasonal influenza 2020, Vaccines. (https://www.who.int/teams/global-influenza-programme/vaccines)
※4)Reichert TA, Sugaya N, Fedson DS, Glezen WP, Simonsen L, Tashiro M. The Japanese experience with vaccinating schoolchildren against influenza. N Engl J Med. 2001;344(12):889-896.
※5)Kawai S, Nanri S, Ban E, Inokuchi M, Tanaka T, Tokumura M, Kimura K, Sugaya N. Influenza vaccination of schoolchildren and influenza outbreaks in a school. Clin Infect Dis. 2011 Jul 15;53(2):130-6.
※1)Jackson, Michael L.; Chung, Jessie R.; Jackson, Lisa A.; et al. (2017)“. Influenza Vaccine Effectiveness in the United States during the 2015‒2016 Season”. New England Journal of Medicine 377 (6): 534‒543.
※2)Nichol KL, Nordin JD, Nelson DB, Mullooly JP, Hak E. Effectiveness of influenza vaccine in the community-dwelling elderly. N Engl J Med. 2007;357(14):1373-1381.
※3)WHO seasonal influenza 2020, Vaccines. (https://www.who.int/teams/global-influenza-programme/vaccines)
※4)Reichert TA, Sugaya N, Fedson DS, Glezen WP, Simonsen L, Tashiro M. The Japanese experience with vaccinating schoolchildren against influenza. N Engl J Med. 2001;344(12):889-896.
※5)Kawai S, Nanri S, Ban E, Inokuchi M, Tanaka T, Tokumura M, Kimura K, Sugaya N. Influenza vaccination of schoolchildren and influenza outbreaks in a school. Clin Infect Dis. 2011 Jul 15;53(2):130-6.
コラム執筆
一宮西病院 総合救急部 救急科
部長
安藤 裕貴
2008年、富山大学卒業。富山大学附属病院・富山県厚生農業協同組合連合会高岡病院で初期研修後、福井大学医学部附属病院にて後期研修。福井市立敦賀病院、名古屋掖済会病院を経て、2018年より一宮西病院。
⇒プロフィールの詳細はこちら
部長
安藤 裕貴
2008年、富山大学卒業。富山大学附属病院・富山県厚生農業協同組合連合会高岡病院で初期研修後、福井大学医学部附属病院にて後期研修。福井市立敦賀病院、名古屋掖済会病院を経て、2018年より一宮西病院。
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※本ページに掲載されている情報は、2020年10月時点のものです。