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ケガをしたら破傷風になる!?


今回は、ケガをして病院を受診したときに接種される、破傷風ワクチンについてお話しします。

破傷風なんて昔話?

破傷風という病気を聞いたことはありますか? 「衛生状態が悪かった昔の病気で、今はほとんどないよ」なんて思っているかもしれませんが、実は毎年100名ほどの方が破傷風を発症していることがわかっています※1
1980年ごろまでは、破傷風は“発症したら100%死亡する”恐ろしい病気でした。それが1981年に3種混合ワクチンが導入されて徐々に死亡率が低下し、1995年に新予防接種法が実施されてより急激に亡くなる人が減っています。これは予防接種の効果がわかりやすい1つの例ですね。
ともかく、今でも毎年100名近くの発症者が出ている破傷風は、決して昔話でもおとぎ話でもないということです。
破傷風患者の届出数と死亡数

破傷風はどんな病気?

破傷風はちょっとしたケガ(ブロックに腕があたった、庭作業をしていて指を切った等)で、傷口に破傷風菌という菌が入ってくることで感染します。破傷風菌は土壌に含まれている菌で、愛知県の土の中にもいます。潜伏期間は短い人で3日、長い人で3週間程度です。野外活動の多い5~10月に患者数が多くなるといわれています。症状は歩行がしにくい、口が開けにくい、食べ物をうまく飲み込めないといった初期症状から始まり、痙攣や後弓反張、呼吸困難をきたして死に至る恐ろしい病です。病院で治療を受けると、全身麻酔や人工呼吸器を使用して全身管理をおこないながら、3週間以上細やかなケアを受けながらの長期入院が必要になります。命が助かったとしても、ベッドで安静にしている期間が非常に長いので、リハビリに相当な苦労が強いられます。

後弓反張のイメージ

ケガをしたら追加の予防接種を

破傷風を予防するには、破傷風トキソイドというワクチンを接種することに尽きます。標準的なワクチンの接種スケジュールでは、全部で5回打つことで十分な免疫ができます※2。ところが5~10年も経つとこの効果は切れてしまいます。
破傷風トキソイドに対する抗体反応

出典: Thwaites CL, Beeching NJ, Newton CR. Maternal and neonatal tetanus. Lancet. 2015;385(9965):362-370. doi:10.1016/S0140-6736(14)60236-1
海外では10年ごとに追加接種をする国が多いのですが、日本では11歳ごろまでに5回の予防接種を受けて終わってしまいます。そうなると最後の予防接種が12歳であれば、22歳を超えてケガをした場合には、破傷風トキソイドの予防接種を受けておくことが非常に大切になってきます。

ケガをして救急外来を受診した際に予防接種をすすめられるのは、適切に管理されている救急外来だけです。みなさんのお近くの病院はいかがですか?
出典
※1)発生動向調査年別報告数一覧(国立感染症研究所)
※2)Thwaites CL, Beeching NJ, Newton CR. Maternal and neonatal tetanus. Lancet. 2015;385(9965):362-370. doi:10.1016/S0140-6736(14)60236-1

コラム執筆

一宮西病院 総合救急部 救急科
部長
安藤 裕貴

2008年、富山大学卒業。富山大学附属病院・富山県厚生農業協同組合連合会高岡病院で初期研修後、福井大学医学部附属病院にて後期研修。福井市立敦賀病院、名古屋掖済会病院を経て、2018年より一宮西病院。

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※本ページに掲載されている情報は、2020年9月時点のものです。
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